REM関連睡眠時無呼吸とは何か

導入

以前の記事「不眠には3つのタイプがある?」で、同じ「不眠」でも中身はさまざまだという話を書きました。実は、睡眠時無呼吸にも「タイプ」があります。

睡眠検査(ポリソムノグラフィー)を受けて「全体としては軽症ですね」と言われた。でも日中の不調が続いている――そんなとき、検査結果の「平均値」の裏に隠れているものがあるかもしれません。今回は、夢を見ている時間帯(REM睡眠)にだけ無呼吸が集中する「REM関連睡眠時無呼吸(REM関連OSA)」の話です。

本文

REM睡眠と無呼吸の関係

睡眠は大きくノンレム睡眠とレム(REM)睡眠に分かれます。REM睡眠は夢を見ることが多い時間帯で、一晩の睡眠の後半、つまり明け方に近づくほど増えるという特徴があります。

REM睡眠中は全身の筋肉の緊張が大きく低下します。上気道(喉のまわり)を支える筋肉もゆるむため、気道が塞がりやすくなると説明されています(Varga & Mokhlesi, 2019)。

このため、睡眠時無呼吸のある人の中には、ノンレム睡眠中はほとんど無呼吸がないのに、REM睡眠中だけ無呼吸が集中して起こるタイプの人がいます。これがREM関連OSAです。

実は「まれ」ではない

REM関連OSAの頻度は、研究によって幅がありますが、決して珍しいものではないと報告されています。

  • 米国の大規模コホート(Wisconsin Sleep Cohort)では、全体のAHI(無呼吸低呼吸指数)が15未満の人のうち22%が、REM睡眠中に限るとAHI 15以上だったと報告されています
  • スイスの地域住民調査(HypnoLaus)では、40.8%がREM睡眠中のAHI 20以上に該当したという報告もあります

数字にかなり幅があるのは、実は「REM関連OSA」の定義自体が研究ごとに揃っていないためです。よく使われるのは「REM睡眠中のAHIがノンレム睡眠中のAHIの2倍以上」という基準ですが、この比だけで判定することの問題点も指摘されており、「ノンレムのAHIが5未満、かつREMのAHIが5以上(REM睡眠を30分以上記録できていることが条件)」といった代替基準も提案されています(Mokhlesi & Punjabi, 2012)。

なぜ見逃されやすいのか

REM関連OSAが見逃されやすい理由は、検査の仕組みを考えると分かります。

  1. REM睡眠は一晩の睡眠の2割程度しかない。REM中にどれだけ無呼吸が集中していても、一晩の「平均値」である総AHIに薄められてしまい、全体としては「軽症」に見える
  2. REM睡眠は明け方に集中する。検査が通常の起床時刻より早く終わる運用だと、REM睡眠そのものが十分記録されず、過小評価されうる
  3. 相対的に軽症で自覚症状が乏しい傾向があり、女性に多いと複数の研究で報告されている(睡眠時無呼吸=中年男性のいびき、というイメージから外れやすい)

放っておいてよいのか

「平均すれば軽症なのだから問題ないのでは」と思いたくなりますが、そうとも言い切れない報告が集まりつつあります。

  • 高血圧:複数の大規模コホート(Wisconsin Sleep Cohort、HypnoLausなど)で、ノンレム睡眠中の無呼吸とは独立に、REM睡眠中の無呼吸の重症度と高血圧との関連が報告されています
  • 血糖:肥満のある2型糖尿病の人を対象とした研究で、REM睡眠中のAHIが高い群ほどHbA1c(血糖の指標)が高いという関連が報告されています。持続血糖モニタリングを使った研究では、通常REM睡眠中には血糖が下がるのに、REM期に無呼吸があるとこの低下が消失したとされます
  • 心血管イベント:心血管疾患の既往がある群で、重症のREM関連無呼吸があると心筋梗塞・脳卒中などの複合リスクが約2.6倍だったという解析があります。ただし該当者が33人と少なく、著者ら自身が解釈に注意を促しています

いずれも観察研究が中心で、因果関係が証明されたわけではありません。それでも「総AHIが軽いから安心」とは言い切れない、というのが現時点の知見の読み方だと思います。

治療にも落とし穴がある

もうひとつ興味深いのが治療の話です。無呼吸の標準治療であるCPAP(持続陽圧呼吸療法)は、装着している時間しか効きません

ここでREM睡眠の性質が効いてきます。REM睡眠は明け方に集中するので、夜中にマスクを外してしまう使い方だと、いちばん無呼吸が起こる時間帯が未治療のまま残ることになります。実際、CPAPの平均使用時間を一晩2.8時間とした場合の試算では、3〜4時間の使用でカバーできるREM睡眠は25〜40%にとどまるという指摘があります(Varga & Mokhlesi, 2019)。

また、体位の影響も報告されています。イスラエルの単施設研究(100例)では、REM関連OSAでもそうでないOSAでも、仰向けで寝ているときのほうが横向きのときより無呼吸の回数が明らかに多いという結果でした。面白いことに、仰向けで増えるのは無呼吸の「回数」であって、1回あたりの「長さ」は変わらなかったそうです(Oksenberg et al., 2010)。

まとめ

  • 睡眠時無呼吸には、REM睡眠中にだけ無呼吸が集中する「REM関連OSA」というタイプがあり、まれではないと報告されている
  • 総AHIという「一晩の平均値」に薄められるため見逃されやすく、相対的に軽症・女性に多いとされる
  • 観察研究レベルでは、高血圧・血糖との関連がノンレム期の無呼吸とは独立に報告されており、「平均が軽いから安心」とは言い切れない
  • 気になる症状がある場合は、検査結果の総AHIだけでなく、REM睡眠中の所見も含めて主治医に相談してみてください

参照した文献

文献出典Vault のノート
Mokhlesi B, Punjabi NM. “REM-related” Obstructive Sleep Apnea: An Epiphenomenon or a Clinically Important Entity?SLEEP 2012;35(1):5-7. DOI: 10.5665/sleep.1570REM関連閉塞性睡眠時無呼吸の定義と臨床的意義
Varga AW, Mokhlesi B. REM Obstructive Sleep Apnea: Risk for Adverse Health Outcomes and Novel TreatmentsSleep Breath 2019;23(2):413-423. DOI: 10.1007/s11325-018-1727-2REM関連OSAの健康アウトカムと治療
Oksenberg A, et al. REM-related obstructive sleep apnea: the effect of body positionJ Clin Sleep Med 2010;6(4):343-348. DOI: 10.5664/jcsm.27875(CrossRef で確認、2026-08-11)REM関連OSAと体位の影響

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